法定相続情報証明制度は、いったいどんなものなのでしょうか。
作成を依頼した方がいい?不要?一緒に考えてみましょう。
○概要
法定相続情報証明制度とは、相続関係を「一覧図」にして法務局に提出し、法務局が保管し、相続人等の申し出に応じて法務局(登記官の認証文と印のあるもの)が一覧図を発行するもので、この一覧図があれば、相続関係を証明できるというものです。
○制度を利用しない場合
そもそも、この制度を利用しない場合、相続登記、預金の払い戻し、有価証券の名義変更等、手続きごとに戸籍一式が要求されます。
そうすると、ある機関に提出した場合、返却されるまで、次の機関で手続きができないので、手続き全体に時間がかかることもあります。
また、被相続人の死亡の記載のある戸籍だけ必要な場合等で、一度戸籍を集めても、戸籍の一部を別のところに提出してしまい、改めて戸籍を取得する必要があるという事態も生じえます。
さらに、戸籍を提出された方も、一から戸籍を解読していく必要があります。
もしかしたら、解読に時間がかかることもあるかもしれません。
このように、相続が発生した場合、戸籍一式は、反復的に利用されるにも関わらず、それぞれの機関で別々に利用される場合が多いため、戸籍で相続関係を証明していては、時間や費用が多くかかってしまいます。
戸籍の原本還付の手続きも、機関が増えれば増える程面倒になると思われます。
○制度を利用する利点
そこで、この証明制度が平成29年5月29日からスタートしました。
申出書(法定相続情報一覧図の保管と交付の申出をするためのもの)、一覧図、戸籍その他を法務局に提出し、一覧図を法務局に保管してもらい、必要に応じて(保管の申し出と同時でも可能)登記官の認証文と印つきの一覧図を発行してもらうことで、戸籍一式に替えることができるというものです。
申し出、保管、交付は無料で、複数枚の発行が可能なので、手続きに応じて複数戸籍を取得する場合に比べ、費用がかかりづらいという利点があります。
また、前述のとおり、今までは各機関に相続関係の分かる戸籍一式を提出していましたが、一覧図の提出で代えることができ、複数の機関の手続きを並行して進めることができ、相続手続きにかかる時間が短縮できます。
提出された機関としても、一から戸籍を解読する必要がなくなるので、迅速かつ正確に手続きが進められることになると思います。
また、少し余計に取得しておくと、急に相続関係を証明する必要に迫られたとき、役に立つかもしれません。
○制度を利用しなくてよい場合
では、逆に、この法定相続情報証明制度を利用する必要がないのは、どのような場合でしょうか。
考えられるのは、相続手続きを行うべき財産がほとんどない場合です。
たとえば、相続による不動産の名義変更だけしたいという方は、戸籍一式を1回きりしか使う予定がないので、わざわざ手間をかけて申し出書類一式を作成し、その完了を待って相続登記をするのは、時間の無駄になります。
預金や有価証券についても、同様に、払い戻しや名義変更をする機関が少なければ、利用しなくてもよいかもしれません。
また、制度が新しく、金融機関や証券会社等によっては、一覧図による相続関係の証明が利用できない場合や、別途、必要な書類を求められることもあるので、まずは、手続き先の機関に確認しておくと、無駄が少ないと思います。
○住所を記載しておくかを選ぶことができる
住所の記載は任意ですが、記載しておくと、手続きの中で住民票の提出が要求される場合であっても、一覧図に記載しているため、別途、住民票を提出する必要がなくなる場合があります。
住民票の取得に時間と費用がかかるため、どちらが都合がよいかを考えて選択すると良いと思います。
○意外にできないこと?特に、再交付の申し出の際は注意!
ここまで見ていただくと、便利そうだな、と思っていただけたかと思います。
でも、意外とこれはダメなの?ということもありますので、確認しておきましょう。
まずは、申し出をした後、一覧図が品切れになり、再交付してほしい場合ですが、申出人しか再交付の申し出ができません。
相続財産を、不動産はA、自動車はB、有価証券はCが相続する、として、申し出をAがしていた場合は、Aしか再交付を受けることはできません。
必要になりそうな分を見越して取得しておくべきということですね。
また、申し出から5年経つと、保管期限切れということで、廃棄されてしまいます。
さらに、全国どこの法務局でも取得できるわけではなく、申し出をした法務局に限り、再発行してもらえます。
どうでしょうか?
多くの場合は、相続が発生すると、複数の手続きで戸籍一式が要求されるので、作成費用(専門家への依頼にかかる費用)と利便性をよく比べて利用することをおすすめします。